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前回、IPアドレスというのは「住所のようなもの」で「コンピュー タを識別できる情報」と考えてください、と書きました。 とはいえ、それだけでは意味がわからないと思いますので、今回は IPアドレスについて、解説をします。1. IPアドレスって何よ?
前回も書きましたが、IPはInternet Protocol(インターネット用 通信手順)のことです。 そのIP通信を行う際に、自分のコンピュータや相手のコンピュータ の識別番号のことをIPアドレスと言います。 ですが、このIPアドレスというもの、分かったようでいまいち よく分からない、といったことはないでしょうか?2. IPアドレスなんて見たことも使ったこともないけど要るの?
もちろん必要です。 見たことも使ったこともないのは当然で、通常はコンピュータ内部 で使うものだからです。 実際、インターネットでの通信を行う時は必ずIPアドレスが使われ ます。 でも、皆さんはIPアドレスなんて気にしていませんよね。 コンピュータはどこでIPアドレスというのを知るのでしょうか? インターネットブラウザ(chromeやfirefox、safariなどのインター ネット上のサイト閲覧を行うアプリ)を使う時には、URLというもの を使います。URLというのは http://xxxxx/yyyyyy といった形式の アレです。 このURLも「インターネット上の住所のようなもの」と言う表現が なされます。 IPアドレスも、URLもどちらも住所だなどと言われると「どっちが ホンモノなの?」と思いますよね。 これは両方とも正しいのです。 実はURLの中に書いてあるドメイン名(http://example.com/xxxx のうち example.comの部分のこと)はコンピュータ内部で、IPアド レスに変換をした上で、以降の内部処理は全て得たIPアドレスに 対してリクエストを送っているのです。 ちなみに、ホスト名からIPアドレスへの変換にはDNS(Domain Name Service)というサービスが使われています。この仕組みもかなり 興味深い仕組みなのですが、今回は省略します。 ですので、IPアドレスは利用者は意識しないませんが、インター ネット通信を行う時には毎回使われているのです。3. IPアドレスの192.168.0.1 とかってナニ?
なぜ、IPアドレスは4つの数字に分けて書くのでしょうか? そもそもで言うと、IPアドレスは32ビットの数値です。 32ビットというのは二進数で32ケタの数値のことです。 げ、数学の話!?と思った方もご安心を。計算は一切出てきま せんから。 例えば、192.168.0.1を二進数で書くとこのようになります。 (ここでは十進数から二進数への計算方法は省略します) 192. 168. 0. 1 ↓ ↓ ↓ ↓ 11000000 10101000 00000000 00000001 何のことはない。単純に先頭から8ケタづつを1つの数字で表記 しているだけのことです。 二進数で、 11000000101010000000000000000001 と書いてもいいはずですし、 十進数で、 3232235520 と書いてもよさそうなものです。 不思議ですよね、どうしてわざわざこんな風に分けて書くので しょうか? この経緯は筆者も知りません。1980年頃は既にこの表記が使われて いたようです。 ですが、日常的にネットワーク管理を行う人にとってはこれは実に 利便性の良い気のきいた表記方法なんです。 どういうことでしょうか。 通常、同じネットワークに属するコンピュータはIPアドレスのうち 前半は同じ値になります。(ここではサブネットなどの話題は盛大 に端折ってます) 例えば以下のコンピュータはどれも同じネットワークに属している ことを示します。 192.168.0.1 192.168.0.85 192.168.0.108 192.168.0.253 どれも先頭の3つの数字が同じですよね。 一方、以下の例では違うネットワークに属していることを示します。 192.168.0.1 192.176.0.135 二番目の数字が違いますら、一目瞭然です。 ですが、これが2進数だと、よく見ないと見落とします。 11000000101010000000000000000001 (192.168.0.1) 11000000101110000000000000000001 (192.178.0.135) さらにこれが10進数だと、さっぱり判断できません。 3232235520 (192.168.0.1) 3232759808 (192.178.0.135) 結局、分けて書いておけば、それを見た人間側が非常に判断しや すいわけで、このような書き方が好まれたわけです。4. IPv6って聞くけど、IPアドレスとは関係ないの?
関係は大ありです。 IPv6というのは、IPバージョン6のことです。 今回解説をしているIPアドレスはIPバージョン4でのお話です。 IPバージョン4が最初に動いたのが1982年と言いますから、もう40年 近くも前の話です。 その後1990年代にはIPバージョン4の将来的な問題を解決するために IPバージョン6が制定されました。 ですが、諸々の事情によりIPバージョン6への切り換えは遅れに遅れ、 2021年現在もなおIPv4の方がよく使われている状況が続いています。 いずれはIPv6に全面的に移行されることでしょうが、その時期が いつになるのかは神のみぞ知る、といった状況です。 なお、IPバージョン5というのもあったのですが廃番になり、次に 出てきたIPv6が採用されたため、IPv5というのはないのです。 IPv6は、IPv4の欠点をいろいろと改善した方式となっています。 これについては次回に解説をしたいと思います。5. IPアドレスって誰が決めてるの?
IPアドレスはIANAという団体によって、各国の管理団体に配布され、 その団体(日本ならJPNIC)が企業やインターネット接続業者(いわ ゆるプロバイダ)に配布を行っていました。 いました、と過去形になっているのは、現在はIANAも全てのIPアド レス配布が終了し、日本国内の在庫も全てなくなり、企業から返却 してもらったアドレスの再配布まで全て終了したためです。 ですので、新たなIPv4アドレスが割り振られることはありません。 上でも書いたIPv6が1990年代に設計された一番の理由はIPv4アドレス の枯渇でした。6. え?そんなのしてないけどネット使えてるよ?
はい。 IANAはもちろん、JPNICにしても個人の申請は受け付けていません。 JPNICによる配布対象は企業やインターネット接続業者(プロバイダ) でした。 ですが、通常の家庭用のパソコン(PC)やスマホなどもネット 接続するためには、IPアドレスは必要です。 そのIPアドレスは誰がどのように提供しているのでしょうか? 実は個人利用のPCやスマホはプライベートアドレスと呼ばれる 特殊なIPアドレスを割り当てられています。 たいていの会社で使っているPCも同様です。 プライベートアドレスという手法を使うと、通常のIPアドレスを 使わずに済むため、IPv4の延命に大きく貢献しました。 このプライベートアドレスの仕組みが非常に良くできていたため、 1990年代には数年で枯渇すると言われていたIPアドレスが2010年代 まで枯渇せずに済んだのです。 とはいっても、上でも述べた通り今後は除々にIPv6に移行すること になることでしょう。7. まとめ
IPアドレスというのははInternet Protocol(インターネット用通信 手順)で使われる識別番号のことです。 このIPアドレスはインターネット通信に必要なのですが、普通に ネットを使っている限り、この値を使う機会はほとんどありません。 IPアドレスは192.168.0.1 のように4つの数字で分けて書きますが、 ネットワーク管理者や技術者にとってはネットワークの識別が容易 という点で優れているため、昔から使われています。 そもそも、IPという通信手順にはバージョン4とバージョン6という 二つの定義があります。 もちろん、バージョン4が古くてバージョン6が新しいのですが、 今でもバージョン4は広く使われていて、バージョン6への移行は あまり進んでいません。 とはいえ、将来にはバージョン6に移行されることでしょう。 今回はIPアドレスについて解説をしました。 途中にも書きましたが、次回はIPv6の解説をしたいと思います。 次回もお楽しみに。