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メールマガジン「がんばりすぎないセキュリティ」No321 (23/08/21)

No321 ナノメートルってナニ?


ナノメートルという言葉をご存知でしょうか?

少し前の話になりますが、2022年末に国内でラピダスという会社が発足しました。
この会社は半導体ファウンドリと言い、半導体の製造専業会社です。

この会社は日本で最先端の半導体製造技術を導入する会社として注目を浴びました。

ニュースでは「2ナノのメートル世代」だとか「2nmのプロセスルール」といった用語が飛び出してきます。
ですが、2ナノメートルと言われても何のことかわからない方も多いと思います。

今回は半導体製造でのプロセスルールとそこで使われている単位についてお話をします。


1. どうしてより小さく作ろうとするのか?

半導体の製造では、小さく作れば作るほどオトクになります。 ・高速化しやすい  →電子の移動距離が短かくなる(他にもある)ため。 ・消費電力が減る  →電流も少なくしやすくなるため。 ・良品率が上がる  →同じ面積で作れる個数が増えれば、同じエラー率でも良品率が上がる。   100個しか採れなかった基板で200個取れるとします。   微細化してもエラー(不純物やゴミが付着する場所)数はあまり変わりません。   仮にこれが5コのままだとすると、良品率 95/100(95%)が、195/200(97.5%)に上がります。 ・必要な材料が減る。 もちろん、今までより小さく作るのは激ムズで、多くの課題をクリアしなければなりません。 小さく作るために半導体メーカと半導体機械の製造メーカは協力して知恵を絞っています。

2. 小ささの基準

半導体を小さく作るには、配線に使う線巾(アルミや銅を使います)を狭く、線と線の間も狭く、各部品も小さく作る必要があります。 この中でも一番狭くするのが難しいのが線巾です。 どれだけ細く線を引ける設備かを「プロセスルール」と呼びます。 例えばプロセスルールが15nmと言えば、最少の線巾が15ナノメートルの半導体が作れる設備(製造ライン)を示します。 ですが、ナノメートルと言われてもあまりなじみがありませんよね。 いわゆるメートル法(国際単位系と言います)では、こういった小さな数字の単位をこと細かに定めています。

3. 国際単位系での接頭語

接頭語というのは、単位(メートルとかリットルとか)の前に付ける単位のことです。キロやミリなどは日常的にも使いますよね。 この接頭語は国際単位系の中で定義されていて、今回は小さい単位について紹介します。 まず、ミリメートル。これはどなたでもご存知ですよね。 1メートルの千分の一です。  1mm=1/1,000m 次の単位はマイクロメートル(俗に言うミクロン)です。 これは1mmの千分の一で、百万分の1メートルです。μmと書きます。  1μm=1/1,000mm=1/1,000,000m なお、μmはumと書かれる場合もあります。 その次の単位がナノメートルです。 今度は1μmの千分の一で、十億分の1メートルです。nmと書きます。  1nm=1/1,000μm=1/1,000,000mm=1/1,000,000,000m さらにその下もあります。ピコメートルです。 今度は1nmの千分の一で、一兆分の1メートルです。pmと書きます。  1pm=1/1,000nm=1/1,000,000μm=1/1,000,000,000mm=1/1,000,000,000,000m 半導体のプロセスルールで使う接頭語はこれで十分ですが、接頭語はまだまだ続きます。 ミリ→マイクロ→ナノ→ピコ→フェムト→アト→ゼクト→ヨクト→ロント→クエクト 最後の2つはなんと2022年に追加定義されたものでした。(筆者も今回調べて初めて知りました)

4. まとめ

最近の半導体では数ナノメートル(1ミリメートルの巾に何万本もの線が引ける細さ!)といった極細の配線が行われています。 こういった極細の線を必要とするのは、CPU(コンピュータの中心となる計算ユニット)やGPU(コンピュータの画面表示ユニット。3D画像の表示が得意)といった単価の高い製品です。 より細い線で半導体を作れば、いいことがたくさんありますので、各社は鎬(しのぎ)を削って、より細い線が引ける設備を開発しています。 この線の細さは毎年のように更新され続けてきていますが、この激しい微細化競走も終わりが見えてきているという方もおられます。 というのは、2nmともなると線巾は既に原子2コ分ほどになっており、これ以上細くすると断線のリスクが劇的に上がるというものです。 とはいえ、今までも数多くの「限界説」を乗り越えてきたのが半導体業界です。 今回も思いがけない解決方法で2nmの先に進んでいくのかもしれません。 今回は、半導体製造での微細化についてお話しました。 次回もお楽しみに。 (本稿は 2023年8月に作成しました)

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