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メールマガジン「がんばりすぎないセキュリティ」No448 (26/03/09)

マイナ保健証ってホントに安全なの?(448号)

少し前ですが、2025年12月からマイナ保健証の義務化が始まりました。

ここでの「義務」は、医療機関がマイナ保険証を拒否しちゃダメよって意味です。
決して患者側がマイナ保険証にしないとダメって意味じゃないです。

とはいいながら、このマイナ保険証って、国などが「便利だよー」と宣伝しているわけで、「そんなの信用できない」と思われている方も多いと思います。

というわけで、今回は「マイナ保険証」の仕組みについてお話します。


1. マイナンバーとマイナンバーカード

この記事では、マイナンバーやマイナ保険証の制度や社会的意義には触れません。筆者の専門領域とはまるで違う話になりますので。 というわけで、今回は、マイナンバー、マイナンバーカード、マイナ保険証という3つのキーワードについてお話をします。 まず、マイナンバーですが、これは既にみなさんご存じだと思いますが、2016年に始まった仕組みで、基本的には、日本の全住民に割り振られた12ケタの番号で、個人番号というものです。 そのマイナンバーが記載され、身分証明書としても利用できるマイナンバーカード(個人番号カード)が発行されます。(こちらも2016年から交付開始) マイナンバー自体は、国が全住民に発行するものですので、拒否はできませんが、マイナンバーカードの作成は任意となっています。 このマイナンバーカードには、いくつかの情報が入っています。  ・電子証明書(後述します)  ・基本4情報(氏名、住所、生年月日、性別) ※オマケとして顔写真データも  ・マイナンバー このうち、電子証明書は、例えば確定申告をe-Taxでオンラインで行う場合に利用できます。 これは、押印と同じで、本人の意思であることの証明になるからです。 次の基本4情報については、マイナ保険証では利用しないのですが、顔認証データだけは本人確認のために利用します。 最後のマイナンバーですが、これも通常のカードリーダなどでは読み取りができません。 というのは、マイナンバーカード自身にも小さなコンピュータが載っていて、そのコンピュータでマイナンバーを渡していい相手かどうかを判断することになっているからです。 実際、マイナンバーを読み込める機器は、税務などのマイナンバーの利用を許されている部署にしか設置されていません。

2. マイナ保険証

「マイナ保険証」と呼ばれるくらいですから、当然マイナンバーが使われていると思いますよね。 ですが、前章の最後に書いたように、マイナンバーを読み込める機器はものすごく絞られていて、医療機関にあるカードリーダではマイナンバーは読み取れません。 だから、意外にも、マイナ保険証では、マイナンバーは一切使っていません。 じゃあ、何を使ってるのか? 答えは、電子証明書です。 さてさて、この「がんばりすぎないセキュリティ」はもう9年になりますが、筆者は未だにこの「電子証明書」を読者の皆さんにわかりやすく解説できた試しがありませんので、ここでは電子証明書自体の説明は止めにしておきます。 ただ、ここでは、「電子証明書」と呼ばれるデータがマイナンバーカードに入っているということに着目して説明を進めます。 この電子証明書には、いくつかの情報が含まれるのですが、その中にシリアル番号というものがあります。 このシリアル番号というのは、マイナンバーとは全く無関係の番号で、マイナンバーカード毎に違っています。 実は、医療機関でマイナンバーカードを使うのは、このシリアル番号を知りたいためなんです。

3. オンライン資格確認等システム

なんとも妙な名前のシステムですが、これが、全国民分の保健加入状況を管理しているシステムの正式名称です。 システム名に「等」なんてのが付いているのは理由があるそうです。 なんでも、当初は「オンライン資格確認システム」だったが、後付けで薬剤とか限度額とかの付加情報が増えたためだとか。まあ、どうでもいい話ですが。 さて、医療機関でマイナ保険証をセットし、顔認証をパスすると、マイナンバーカードにアクセスし、その中の電子証明書をこのオンライン資格確認等システムに送ります。 そのシステムでは次のような処理を行って加入している組合の情報(記号や番号)を取ってきます。  1) 証明書からシリアル番号を抜き取ります。   ↓  2) シリアル番号を加工して、内部IDを作ります。   ※情報は全て内部IDで検索できるようになっている。   ↓  3) 内部IDで資格情報を取得   ↓  4) 医療機関に資格情報を返す 何のことはない、今までの保健証と同じことを巨大なシステムを使ってやってるだけです。 じゃあ、そこまで手間をかけて、マイナ保険証なんてのを作るのは壮大な無駄なのか?というと必ずしもそうとは言い切れません。 これの最大のメリットは、患者側ではなく、医療機関側にあります。 今まで、患者側の間違いなどで、古い保険証を持ってこられた場合、誤請求となってしまい、その付け替えには、大きな手間がかかっていました。 また、患者が資格を喪失していたとしても、リアルタイムでその状況を知る方法はなく、本来は全額請求できるところが、できないケースが生じていました。 これは医療事務の効率化を妨げる大きな要因でした。 逆に言えば、患者側のマイナ保険証のメリットなんて筆者に言わせれば、たかが知れています。 冒頭で社会的意義には触れないと言いながらなんですが、医療の事務コストが下がれば、巡り巡って医療費が下がるかもしれませんし、患者側にも多少はメリットがあるんじゃないかと、筆者は思います。

4. まとめ

マイナ保険証が2024年からはじまり、2025年12月には、全ての医療機関での受け入れられるようになりました。 なんとなく、マイナンバーを医療機関に渡すことに、違和感を持つ方も多いのではないかと思いますが、実際には、医療機関ではマイナンバーは一切使っていません。 その代わりに、マイナンバーカードの中に入っている電子証明書のシリアル番号というものを利用して、加入している保険組合などの情報を検索しています。 また、投薬の情報がとれるというのも、この「オンライン資格確認等システム」にもともと入ってる情報です。(でないと、薬に対して保険料が支払いできません) そこに医療機関からもアクセスできるようになった、ということです。 マイナ保険証には薬や病状の情報は入ったりしませんし、紛失や盗難による悪用も相当に困難です。 実際、マイナンバーカードを技術的に破ったという話を筆者は知りません。 マイナンバーカードには、かなり興味深い技術的なポイントはあるのですが、使われている技術が電子証明書や電子署名をベースにしたものですから、なかなか平易な解説が難しく、筆者も手を出せていません。 もし、本号で多少なりとも、興味をお持ちの方がおられれば、是非教えてください。 続編の執筆を検討します。 今回は、マイナ保険証のお話でした。 次回もお楽しみに 今日お話したこと: ・マイナ保険証ではマイナンバーは使っていません。 ・マイナンバーカードに医療情報は入りません。 ・証明書のシリアル番号から、個人を特定する方法は事実上ありません。 (本稿は 2026年3月に作成しました)

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